【村田ブログ】 – Steve “LUKE” Lukather Signature – 】VOL.2
前回の記事の内容はチェックしていただけたでしょうか。
今回は改めてLUKEシグネイチャーを見ていきます。
まずはMusicman LUKE III 本体の特徴ですが
- スケールは25-1/2”でフェンダーの系譜
- グリップシェイプはどちらかと言うとギブソンの系譜(ナローネックの335を連想)
- 指板は12″ でギブソンスタイル
- フレットサイズはロープロファイルのワイド=ギブソンの系譜
- ボディーサイズはLPとストラトを掛け合わせた印象。
やや小ぶりのダブルカット=フェンダーとギブソンのミックス - トレモロ搭載でフローティングセットアップ=フェンダーストラトの系譜
と言うわけで、ルックス、演奏面、サウンド面で、前回でまとめたLUKEが好んできた楽器の傾向が見事に反映されています。もちろんLUKEだけでなく、このスペックを好むみなさんも多いと思いますが、注目点はフレットがロープロファイルでワイド、という事でしょうか。
冷静にMusicmanのLUKEモデルを弾いてみるとわかるのですが、特に感動するのがハイポジションで2音半など「ファンキーな」チョーキングをした時のフィーリングです。「全く」音が詰まる事なく、音の線も細くならない。まさしくLUKEが熱くなった時のあの「ハイポジでのベンディング」が体験できます。これは60年代のヴィンテージギターでは得られない演奏性だと思います。そしてSRVの影響下にあるストラト弾きはどうしてもジャンボフレットの呪縛に囚われがちですが、かなり強烈なアタックとメタリックなサウンドはある意味「我の強いサウンド」になりがちです。LUKEの場合はロープロファイル・フレットを用いる事でアタックはソフトに、ニュアンスを優先していると考えられます。
ネック材はローステッドのバーズアイメイプル、指板はローズウッド(Olive Pearlカラーのみエボニー )でボディーはアルダーです。ペグはシャーラーロッキングタイプ、トレモロはMusicmanオリジナルのヴィンテージスタイル。サドルはプレス・スティールと言うクラシックな仕様で、材の構成やギター本体のサウンドの傾向はフェンダー系譜だといえます。
↑こちらのナットもMusicmanの特徴です。これは「コンペンセイテッド・ナット」と呼ばれており、特にローポジション(開放弦を用いたコードや2弦の響き)でイントネーションを改善するための仕様です。特別なバズフェイトンの様なチューニングやセットアップ、イントネーション調整の必要ありません。このナットはミュージックマンのギターとベースに標準装備されています。各弦の弦長を微調節することによって音程を一定に保ちます。このナットは.009-.042ゲージを基準に設計されていますが、オルタネイト・チューニングや異なるゲージ、弾くスタイルが変わっても十分効果を発揮します。
マニアックなところではブリッジエンドに装着されたクッションパッドに注目です。LUKEはトレモロブリッジをアームを使わずにガンガンと手でヒットして独特のベンディングを行いますが、そのスタイルだとボディートップに傷が…入ります。それを防ぐ意味で装着されていると思われます。
エレクトリック
さすがLAの一流プレイヤーのシグネイチャーモデル。
マニアックなのでワクワクしてください
LUKEシグネイチャーも初期にはEMGのLUKEセット(SLV/SLV/85)を搭載していましたが、現在のLUKE IIIではMusicmanオリジナルピックアップとアクティヴ・プリアンプを搭載しています。
2つのモデルがラインナップされ、HSSでは非常に反応が良く、パワーのあるシングルコイル+シングルに比べてややローパワーでワイドレンジなハムバッカーのコンビ。これはEMGのLUKEシグネイチャーモデルを連想させます。両モデルとも+20dBのゲインブースターを搭載。ボリュームポットをプッシュする事でON/OFFできます。
シングルコイルは「ワイドスペクトラム・サイレントサーキット」搭載のシングルコイル(ダミーコイルでハムキャンセル)で音色的にはグレイボビン系だといえます。
ハムバッカーのマグネットはアルニコVというクラシックなスペック。トーンポットは500Kオーム+.022µFのコンデンサ=パッシヴです。流石のチョイスというか、意味のあるこだわりを感じます。まさにヴィンテージギターのサウンドとスーパーストラトのサウンドを融合させた仕様になっています。
HSSモデルはバックパネルの基板上にハムキャンセルのポイントを微調整できるアジャスターを備えています。これにより、ハイゲイン時にも限りなくハムノイズを抑えることができ、さらにノイズキャンセルの具合次第で任意での音色調整を行う事も可能です。
2Hモデルは2つのハムバッカー+Musicmanオリジナルプリアンプ、とHSSと似た仕様ですが、ここにもこだわりが。
ネック側ハムバッカーピックアップにはセラミックマグネットを採用。タイトでスピード感を重視しています。ブリッジ側ハムバッカーはHSSモデルと同じアルニコVマグネットを採用。ネック/ブリッジの両ピックアップ共にローゲインでありながら、ニュアンス重視でスピード感があります。パッシブピックアップならではのレスポンスとプリアンプで整理された音色の融合はこのLUKEIIIならでは、だと言えます。
ピックアップセレクターは5wayで2つのハムバッカーサウンドとパラレルミックス(=LPと同じ)に加え、両ハムバッカーのコイルタップを備えています。内側ボビンのパラレルはストラト的ハーフトーン、外側ボビンのパラレルはテレキャスターのミックス的なサウンドです。
プリアンプのおかげか、TONEコントロールを操作する事で往年のLUKEサウンドからヴィンテージライクなサウンドまでを引き出すことができます。
このTONE(と言うかEQ)はクラプトンモデルの様にセンタークリックでフラットと言う仕様ではないのですが、フルアップでややピーキーな80’sサウンド、少しトーンを絞るとオールドスクールな音色が引き出せるのが面白いところです。
もちろんVOLUMEを絞ると自然に全体の音量が下がり、その操作感はヴィンテージギターを彷彿とさせます。アクティヴサーキット(バッファ)を通過しているせいか、ボリュームを絞ってもハイパスコンデンサを装着した時の様な味気ないクリーンサウンドにはなりません。つまりピックアップはパッシブですがエレクトリック・プリアンプを搭載する事で明瞭なサウンドを作り出しているといえます。
また、バッテリーボックスにもMusicmanオリジナルを採用していますが、これが非常によく考えてデザインされています。このあたりにもMusicmanの気質を感じます。
Compare to EMG
EMGの良いところはローワウンドのピックアップを(ピックアップに内臓の)プリアンプと組みわせる事で、反応の良さと安定した出力を得る。そしてノイズレス、と言う事になります。ルークシグネイチャーのEMG SLVは同じくEMG SAVと似ている様ですが、バータイプではなくポールピースタイプを採用。さらにコイルの巻き数を増やす事で全体的なパワー感を上げています。ハムバッカーのEMG 85はアルニコ5マグネットを採用=PAF的で「オールドな」サウンドが特徴です。ウォーム&スムースなサウンドが持ち味なので、まさにPAFを載せたギブソン「バースト」を好むLUKEの好みにフィットしたのだと思います。
Musicman LUKE IIIの場合はオリジナルのローゲイン・パッシヴ・ピックアップとオリジナルプリアンプを組みわせる事で、よりLUKEの好む音色に仕上げていると言う事になるのでしょう。LUKEも「いい歳」になって強者渦巻くLAギター界で「攻めのサウンド」で演奏するよりも、ゆっくりと自分らしいサウンドも欲する様になった…と考えてみるとこの選択の意味が見えてきます(勝手な推測です)とは言いつつも「枯れた」ニュアンスを全面に押し出すわけではなく、LUKEならではのゴツゴツしたローエンドとハイファイなトレブルの強さは残っています。
ちなみに、このブログに関しての主たる情報は、2008年ごろのVintage Guitar Magazineのインタビューからまとめた情報を引用しているので、その頃からLUKEもちょっとレイバックし始めているのかも知れませんね。
と言う訳でLUKEの愛用楽器を振り返りながら、最新のシグネイチャーモデルであるMusicman LUKE IIIをご紹介しました。
歴戦の強者ミュージシャンがこだわり抜いてデザインした最新モデルはLUKEの名に恥じないギターに仕上がっています。ブルージーなフレーズからメタル・リフまでに対応する幅広さと、ノイズを抑えつつクラシックなサウンドが得られる様に考え抜かれたまさにスペシャルデザインなギターです。セッションミュージシャンはもちろん、配信の現場やレコーディングでここまで頼れるギターには中々、出逢えないでしょう。是非手に取ってお試しください。
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