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【連載コラム】USAGI NO MIMIの楽しみ方 (20代後半男性の場合 その4)

【連載コラム】USAGI NO MIMIの楽しみ方 (20代後半男性の場合 その4)

渋谷店ニシキドです。
前回までは当たり前ですが音源作品を通してUsagi no mimiをご紹介してきました。

今回は映画で楽しむUsagi no mimiというテーマで書いていきたいと思います。

僕は自宅にて基本的にiTunesかApple Musicで音楽を、NetflixやAmazon Prime Videoで映像作品を と全てPCで再生しています。となると映画を観る時も音声は必然的にUsagi no mimiを通して聴くことになります。

そこでどういったことが起こるのか…映画の内容もご紹介しながら書いていこうと思います。

特段映画に詳しいわけではありませんが「こんなのあるんだ。」だとか「これ見ようと思って忘れてたんだよね。」なんて思い出して頂くきっかけに&Usagi no mimiのご紹介ができればなと思っております。

というわけで早速!!

ジャーニー/ドント・ストップ・ビリーヴィン(2013)

え。バンド名と曲名じゃないか!とツッコミが入る隙もない直球のタイトル。そうです。今回はジャーニーの映画をピックアップしてみます。決して有名曲だから…といった理由ではなく(たぶん)この曲名をタイトルにした意味も納得な内容なのです。

JOURNEYというバンド

この作品はドキュメンタリー形式です。ですのでバンドの歴史もさらっとおさらいしておく必要があります。

1973年 カルロス・サンタナのバンドに参加していたニール・ショーン(Gt.)とグレッグ・ローリー(Key.)を中心にサンフランシスコで結成。1975年 1st「JORNEY」でデビュー。この頃はプログレッシブロック的要素が濃くセールス的にはうまくいかず、1976年 スティーブ・ペリー(Vo.)が加入したことにより徐々にバンドの音楽性が変化していきます。もちろんビジネス的策略もありましたが、一番は彼の”時に力強く、どこまでものびやかな美しい歌声”を活かす楽曲作りにシフトしたことが大きいと思います。70年代後半〜80年代に入るとバンドの勢いは加速し1981年には7st「ESCAPE」で遂に全米第一位を獲得。バンドは不動の地位を手にし、経済的にも豊かになります。

しかしながら安定した地位や名誉、金銭的な余裕もあり、各々がソロの活動を開始すると徐々にバンドは形を崩していきます。1987年 遂にはボーカリストのスティーブ・ペリーも心労を理由にツアー中に脱退。バンドは活動停滞となります。


〜それから10年後の1996年 スティーブ・ペリーもバンドに戻り、アルバムを発表しましたが退行性骨関節疾患を患いツアーは決行されず。1998年メンバーとの協議の末、正式にバンドから脱退します。

その後もバンドは2007年まで別のボーカリストを何人か起用しつつ活動を続けますが、継続的な活動を続けることは出来なかったようです。やはりスティーブの”声”が…ということもあったかと思います。もちろんこの間に起用されたボーカリスト達も素晴らしいのですが…(個人的にはジェフ・スコット・ソートなどはかなり好みです。)QUEENも近しい時期に”バンドの声”問題に直面していますね。(ポール・ロジャースの声も大好きですが)

これ以降が今回の映画の話となります。もしJOURNEYは通ってないよ〜という方がいらっしゃいましたらさらっとでもいいので音源を聴いて、スティーブ・ペリー時代のLIVE映像もご覧頂けるともっとこの作品が楽しめるかと思います。(予習なしでもある程度はお楽しみ頂けますが)

あらすじ

物語は2007年、脱退したボーカル、ジェフ・スコット・ソートに代わる新ボーカルを探していたニール・ショーンが、Youtubeで、ジャーニーのナンバーを歌う無名のシンガーの映像を見つけるところから物語は動き出します。

この無名のシンガー実はフィリピンのマニラで活動しており名前をアーネル・ピネダと言います。その歌唱力とインパクトの強さ、何よりジャーニーの曲を歌うことで聴き手の心に大きな感動をもたらすことができるという事実。その迫力にニール・ショーンは驚愕を覚えます。その後ジャーニーのボーカリストとなるべく、渡米。気候も環境も違うアメリカの土地でこの上のないくらいのプレッシャーを感じつつ参加したオーディションを経て、見事にジャーニーの新ボーカリストとして迎えられることになりますが、彼のこれまでの人生は決して順風満帆なものではありませんでした。

売れないシンガーでありながらも夢を捨てきれず、これまでの家族との別れや路上生活を送らざるをえない貧困生活。様々な挫折を経験しながらも、歌を歌うという夢を諦めずに、人生を歌にかけてきた男のストーリーはまさにアメリカンサクセスドリームを体現するものとなっています。40歳でジャーニーの新ボーカリストとなった彼は、ジャーニーのフロントマンとして活躍していくことになるが…。

予告編トレーラーを下記に貼っておきますが観ずに本編が一番のおすすめです。

Usagi no mimiで鑑賞してみて

Usagi no mimiを通して音声を再生することで周囲の環境音やインタビューの音声もよく聞こえるかと思いましたが、そこはドキュメンタリー。基本的にハンドカメラでの撮影。故にインタビューや密着中の音声は本格的なマイキングをしていないと思われます。しかしながらLIVEシーンの迫力は従来の環境で見たときよりもずっとずっとリアリティが増しました。

僕は過去コンサート業界に従事しておりました。目の前で繰り広げられるアーティストさんのパフォーマンスはもちろん圧巻なのですが、個人的に一番ゾクっとする瞬間はオーディエンスの歓声や”どよめき”でした。何万人という人々が一斉に叫びをあげる瞬間。そこが最高に高揚し鳥肌が立ちます。Usagi no mimiで観るライブシーンにはそれに近い感覚を覚えました。いつもより遠くの歓声が聴こえてくるのです。

また本作の主人公であるアーネルの声。彼の声の素晴らしさが本当によく伝わります。今まではなんとなくで雰囲気でわかったふりをしていただけかもしれません…。心にスッと入ってくるような優しくて伸びのある声。生命感のある/与えることのできるような…ハリがありどこまでも届いてしまうような声…。響きました。

音源同様にUsagi no mimiでより「見えてくる音や風景」が確かにありました。

感想 ※ネタバレ含む??

そして内容のお話に戻ります。映画も終盤に差し掛かりすっかりジャーニーのツアーに同行しているような気分になった状態でのラストシーン。アーネルの故郷マニラでのライブ…。正しいか間違っているかはわからないですが個人的に”ある事”に気がついてしまいました。それは作品タイトルにもなっている楽曲”Don’t Stop Believin'”の歌詞の内容の中にあります。

Don’t Stop Believin’ – Journey

Just a small town girl Livin’ in a lonely world
She took the midnight train goin’ anywhere
ただ田舎の少女さ 孤独な世界に住んでいる
夜行列車に乗りどこへでも

田舎の少女→マニラのアーネル

Just a city boy Born and raised in south Detroit
He took the midnight train goin’ anywhere
ただ都会の少年さ 生まれも育ちも南デトロイト
夜行列車に乗りどこへでも

都会の少年→アメリカのジャーニー
夜行列車に乗って→ジャーニーという同じ列車に乗ってどこまでも

A singer in a smoky room A smell of wine and cheap perfume
For a smile they can share the night It goes on and on, and on, and on
煙たい部屋の歌手 ワインと安物の香水の匂い
微笑み一つで2人は一夜を共に過ごせる いつまでも

アーネルがマニラで出演していた小さなクラブの描写

Strangers waiting Up and down the boulevard
Their shadows searching in the night
通りのあちこちで 見知らぬ人々は待っている
夜の闇の中その影は探している

いつか夢が叶う、この状態から脱却できると信じる
アーネルのマニラでの無名シンガー時代の生活

Streetlights, people Living just to find emotion
Hiding somewhere in the night
街灯 人々
どこか夜の闇に隠れている感情を ただ探すために生きている

Working hard to get my fill Everybody wants a thrill
Payin’ anything to roll the diceJust one more time
食っていくために必死で働き みんな刺激を欲しがっている
あともう一回サイコロを振るためなら いくらでも出す

酒、ドラックなど自暴自棄な行動で荒れていた時代のアーネル

Some will win, some will lose Some were born to sing the blues
Oh, the movie never ends It goes on and on, and on, and on
ある者は勝ち、ある者は負ける あるものはブルースを歌うために生まれてきたのさ
それぞれの人生に終りなんてない どこまでも

世の中の理と厳しさ、使命

Don’t stop believin’ Hold on to the feelin’ Streetlights, people
信じることを諦めないで 自分の信念を持ち続けて 街灯の下で彷徨う人々のように

信じることをやめなければ夢は掴むことができるというメッセージ

Originally released as the second single from their seventh album, Escape (1981)
Translation:A.Kiyosawa

1981年に生まれた本作品ですが、まるで2007年以降の話が見えていたかのような歌詞です。

これに気づいてしまうと…感動が止まりません。

ちなみにザック・ワイルド、ジェイソン・ボーナムらが出演した映画「Rock Star」(2001年)もバンドのファンからボーカリストに抜擢というストーリーでしたがこちらはフィクション。(なんとジェフ・スコット・ソートも歌入れで参加していたそうです。)

まさか本当にこんなことが現実に起こってしまうなんて…ジャーニーのメンバーはもちろんアーネルも含め、規格外の器と漢気。惚れ惚れします。

そしてこの楽曲のエネルギーは本当に凄まじい。きっとたくさんの人々を救ってきたことでしょう。

是非楽曲も映画と共にチェックしてみてください。

最後に

というわけで今回は映画で楽しむUsagi no mimiブログでした。次回は環境音も楽しめるような作品をピックアップしてみたいと考えております。引き続き音源か音楽映画か…その他映画か…スタッフ趣味全開のUsagi no mimiブログをお楽しみ頂ければと思います。

渋谷店 ニシキド

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